こんにちは。荷物運び用荷物(@nimotsu_hakobi)です。
今回は、両国の江戸東京博物館で開催中の「奇才―江戸絵画の冒険者たち」へ行ってきました!
目次
- 「奇才―江戸絵画の冒険者たち」ってどんな特別展?
- 展示室の様子・感想
- グッズのラインナップ
- 「【感想】「奇才―江戸絵画の冒険者たち」訪問記。【感じたことまとめ】」のまとめ
- 特別展「奇才―江戸絵画の冒険者たち」の概要
- 参考サイト
「奇才―江戸絵画の冒険者たち」ってどんな特別展?
江戸時代には、従来の常識を打ち破り、斬新で個性的な表現に挑んだ「奇才」と呼ぶべき絵師たちが、全国で活躍していました。昨今注目を集める伊藤若冲、長澤蘆雪、曾我蕭白、歌川国芳ら、過激で強烈な個性を放つ絵師にとどまらず、従来の江戸絵画史において"主流派"として語られてきた、俵屋宗達や尾形光琳、円山応挙らも新しい表現に挑み続けています。
本展では、北は北海道から南は九州まで、全国から35人の奇才絵師を集め、その個性溢れる作品を選りすぐり紹介します。東京が世界の注目を集める2020年にまさしくふさわしい特別展です。出典元:特別展「奇才 -江戸絵画の冒険者たち-」公式HP
江戸時代、活躍していた画家が「全国」にいたというのがポイントです。普通は京都か江戸か、という話になって来るのですが、当特別展では全国各地にいた画家たちを有名な画家と同等の力加減で扱った展示となっています。あなたの地元出身の「奇才」もいるかも?!
展示室の様子・感想
それではさっそく、展示の感想をつらつらと述べていきたいと思います。
全体の感想
琳派と奇想の系譜メンバーだけではない!江戸時代の奇才たち
江戸時代の展示となると、光琳(琳派)・若冲・国芳…なんかはよく聞きますよね。ところが、あまり有名ではない地方の画家にも光が当たる展示構成となっているのが今回の特別展です。都道府県の枠組で捉え直すことで、都心だけにこだわらない広い視野で江戸の絵画史を読み解くことができます。ここで人気が出た画家は、ゆくゆくは自分が主役の特別展が開催されちゃったりして…!
感染対策
入館の際に検温と消毒など、感染防止対策は徹底している印象でした。今回日曜に訪問した私は平気だったのですが、チケットが予約制ではないため、混雑してしまうと入場制限がかかる場合があります。土日はその可能性もある、と思って行くと良いでしょう。
画家ごとの感想
目についたもので、コメントしたくなったものだけピックアップして文字に起こしました。以下、だらだらと私が思ったこととかツッコミをまとめましたので行く前の参考に、言った後の共感に使ってください。知識不足なところがあったらすみません!
狩野山雪(かのうさんせつ)
『龍虎図屏風』。私の好きな動物の一つである、トラが描かれています。毛の書き込みはすごく細かくてリアルさがありますが、顔部分の線は太く濃い。描き方に強弱をつけていることで、表情に目が行きます。
『寒山拾得図』。大きな寒山拾得!ニンマリ笑った表情が、見た人を簡単には忘れさせません。ひび割れた爪など、芸も細かい。妖怪のような不気味さ漂う寒山拾得です。
丸山応挙(まるやまおうきょ)
『淀川両岸図巻画稿』。この絵巻は面白いですね!
唐突に貼られた下手くそな図に驚かれたかもしれません。この絵巻は真ん中に川が流れていて、川の両岸には民家や山が描かれています。特徴は、下側の岸が上下逆に描かれていること。これは、舟で実際に川下りをする人がどう見えるかを、という視点で描かれたそうなのです。確かに、この絵巻の右から左にまっすぐ川下りをするように鑑賞する(画像を縦にして見る)と、上下学という違和感は薄れます。実際に広がっている景色ではなく、目で見て頭で捉えたイメージ・感覚としての風景を描いているというのは、西洋絵画ではあまり見られない特徴です。
長澤蘆雪(ながさわろせつ)
『寒山拾得図』。先ほどの山雪の寒山拾得とは違い、かわいらしさがあります。きもかわいい、という種類の可愛さでしょうか。キャラクター性が増しています。
祇園井特(ぎおんせいとく)
『虎御前と曾我十郎図屏風』。恥ずかしながら私は、祇園井特を今回初めて知りました…。 さて、面白いと思った点は男の顔の角度です。男の顔を斜め下からという難易度の高い角度から描こうと試みているんですよね。日本の昔の絵って、鼻の穴が見える角度からの人間はあまり見たことがないと思いませんか?
また、女性の唇は緑色。これは笹紅といって、当時流行した口紅です。塗り重ねると玉虫色に輝く高級口紅が流行しました。あまりの価格に手の届かない女性たちは、似せるように唇を緑色に塗っていたそうです。
狩野永岳(かのうえいがく)
『熊鷹図屏風』。クマってあまり日本美術史の中で見ることないですよね?そんなに大きくなさそうで、首元にそれらしき白い模様が見えたので、おそらくツキノワグマだと思います(ヒグマは北海道にしかいないし)。まっくろで、初めはクロヒョウかと思いました。クマの絵って個人的にとても気になりますね。ちなみに、しばらく鷹を探しちゃったんですけど今回は左隻しか来ていませんので鷹はいません(笑)
中村芳中(なかむらほうちゅう)
芳中、次に人気出たりしないですかね?解説パネルを見ていて、ちょっと学芸員さんが推しているのかな~と思いました。
『公卿観楓図』。貴族っぽい男性が後ろを向いているのですが、現代のTwitterで見かけたイラストかってくらいゆるいんですね。なんかアホ毛みたいなのも出ています。ヘタウマとド下手の中間という感じでしょうか…。可愛らしいので、仙厓みたいに魅せたら人気出そうですけどね。他の絵も後ろ姿で可愛かったです。
耳鳥斎(にちょうさい)
『別世界巻』。地獄で生前の職業に関係する刑を受けているんですけど、そんなに辛くなさそうなんですよね。ところてんにされちゃったり、三味線にされて引かれちゃっりしている。でも刑を受けている死者たちは「あ~ベランダに洗濯物干してるのに雨降ってきちゃった~」くらいの危機感なんですよね。みんな、自分の職業が好きなんだろうな、と思います。江戸時代は、現代ほど安定を求めて就活したり終電まで残業したり…ということはなかったので、楽しんで仕事もしていたんだろうな、と現代人との差を感じました。
葛飾北斎(かつしかほくさい)
『弘法大師修法図』。大きいです!!北斎のでかい絵は見る機会が少ないですが、当特別展に出展されている北斎の作品はサイズ大きめなのでいつもの北斎ゾーンと雰囲気違いました。
鈴木其一(すずききいつ)
『達磨図凧』。まっすぐに前を見据える凧に描かれた達磨大師に心を射抜かれちゃったのは私だけですか?目が離せなくなる作品でした。雪舟の『慧可断碑図』のように、顔はめっちゃ細かく書き込まれているんですけど、その他の線は太く雑なんですよね。その強弱もあって、目が合うと動けなくなる作品でした。
狩野(逸見)一信(かのうへんみかずのぶ)
『五百羅漢図~六道 地獄』。現代で言えば映画や漫画のクライマックスみたいな絵でした。現代にいたら映画監督とか漫画家とかになっているんでしょうかね。一枚の大きな絵の中でいろんなことが起きているんです。熱さ、速さ、空気が伝わってきます。
蠣崎波響(かきざきはきょう)
私の地元・北海道の画家!地元画家が来たので嬉しいですね。『夷酋列像図』では、絵を波響が、文章を松平定信が書いています!あの大物とコラボしている絵師が地元から出ているとはね…。
河鍋暁斎(かわなべきょうさい)
私は暁斎を何でも描けて本当に天才だと思っています。そこで初めて知ったんですが、ウィーン万博に出品していたんですね。世界レベルの暁斎。何も異論はありません。
ただ、展示作品が小さい画帖3点だったので、もう少し展示点数があったら嬉しかったです!暁斎は「奇才」の代表格なのかなと思っていたので…。
田中訥言(たなかとつげん)→ 絵金(えきん)
余白を贅沢に贅沢に使った優雅な金の屏風があるなと思ったら、情報量150%の歌舞伎を描いた屏風が続きます。並びで展示されているので、あまりの差に驚きました。フット後藤風に言えば、「高低差で耳キーンなるわ」です。
仙厓(せんがい)
ここにきての仙厓を見てしまうと、ヘタウマではなくド下手だと感じました。
片山楊谷(かたやまようこく)
トラの作品が二つも展示されています!見比べることをお勧めします。
『竹虎図屏風』の方は、20代線半ごろの作品。こちらのトラは、毛の誇張がすごいです。毛虫とかハリネズミとかのレベルです。毛の中に顔が埋もれていて、その目はギョロっとしています。ていうか、体の形はどうなっているのでしょうか…? また、背景のしなる竹はすごくかっこいい。若さからくる勢いを感じることができます。
『花王獣王図』の方は、24歳の作品。おそらく先ほどの作品よりも後にできたのだと思います。こちらの方が、より本物のトラに近づいています。トラの顔に目を向けると、アニメのキャラクターのような表情!手塚治虫作品に出てきそう(そんなことはない)。
グッズのラインナップ
図録のほかに、ポストカード・缶バッジ・マグネット・トートバッグが販売されています。
「【感想】「奇才―江戸絵画の冒険者たち」訪問記。【感じたことまとめ】」のまとめ
「奇才―江戸絵画の冒険者たち」は、江戸時代の面白い画家を少しずつつまみ食いできる贅沢な特別展でした!このつまみ食いで気に入った画家や作品、モチーフを今後の鑑賞で注目してみたり、次に行く美術館の選定材料に使えたらいいのではないでしょうか。
江戸時代は、それぞれの画家が本当に試行錯誤してきた時代です。恵まれていることに残っている作品点数も多いし、楽しめる機会は多いですよ!江戸美術好きの私からそんな言葉を投げかけて、今回は終わりにしたいと思います。ここまで読んでいただきありがとうございました。
特別展「奇才―江戸絵画の冒険者たち」の概要
東京展の会期は2020年6月21日(日)までとなります。行きたいと考えている方はお早めに!
閉幕後は、大阪、山口へも巡回します。
参考サイト