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【写真撮影OK!訪問レポート】「日本美術の裏の裏」は日本美術の見方を教えてくれた【感想】

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こんにちは。荷物運び用荷物(@nimotsu_hakobi)です。

今回は、サントリー美術館で開催されている「日本美術の裏の裏」に行ってきました!

 

最近なんか面白そうな美術展あるかな〜と思って探していたら、なんだかまたサントリー美術館が面白そうな切り口で展示しているようだったので、六本木まではるばる(30分くらい)行ってきました。はじめに言っておくと、私はサントリー美術館が結構好きです。

 

目次

 

「日本美術の裏の裏」ってどんな展覧会?

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「日本美術の裏の裏」は、現在六本木のサントリー美術館で開催されている特別展です。

 

予約は必要?

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予約は必要ありません。入場前にオンラインチケットを購入することができます。購入した日に関わらず、購入した展覧会の会期中ならいつでも使えるようです。会場でもチケットは購入できますが、公式HPではオンラインチケットの購入を推奨しています。

 

「日本美術の裏の裏」の特徴

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本展は、写真撮影OKです。撮影可の一部分だけ撮れることは最近珍しくないですが、基本どこでも撮れるのはまだ多くないかなと思います。

また、テーマは「生活の中の美」と日本美術の「裏」。ここに展示してある作品たちは当時から展示されるためのものだったわけではなく、どこかの家にあって、飾られていたり日常で使用されるために作られました。日本美術がどうやって楽しまれてきたのか、逆にどう考えれば日本美術をより楽しめるのかを考える展覧会になっています。

 

「日本美術の裏の裏」鑑賞レポート!

ではではさっそく、日本美術の世界へと入っていきましょう。この後は、作品を観て感じたことを率直に書いていきます。写真も多いため、これから観に行くけどネタバレは見たくない!という方はこちらでお帰りください。

※専門家ではないので、必ずしも正しいことを言っていない場合があります。

 

第1章 空間をつくる

まずは円山応挙!ドドーン!滝の絵だ!

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(「青楓瀑布図」円山応挙/江戸時代 1787年)

入口の盛り上げ方はリニューアルオープンの意気込みを表している感じで、比喩表現とかでなく実際に水の音がします。外の世界と、これから入っていく日本美術の世界の境界線になっています。

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和室っぽくなってるー!こういうセットみたいになっている展示室大好きです。
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(「春夏花鳥図屏風」狩野永納/江戸時代 17世紀)

鳥たちの楽園に来たなぁ~と気持ちが晴れやかになるような屏風です。
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そばでは蝶が飛んでいる演出が!今後は、こんな演出もできる美術館に進化したんですね。リニューアルしたサントリー美術館すごい。
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ススキの屏風を盛り上げるススキも発見。

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「洛中洛外図屏風」伝 土佐光高(江戸時代 17世紀)

洛中洛外図は、京都の市中と郊外を広ーく描いたものです。二つの屏風を向かい合わせに立てると都を一望している感覚になるのですね。

「まるで憧れの都が部屋に立ち現れるかのようです。」と解説パネルにあったのですが、そうかぁ。今まで洛中洛外図屏風の発注主って京都または最低でも関西の人が京都が好きでとか思い入れがあるとかで発注するんだろうなぁと思っていましたが、京都に行く機会はないんだけど京都ってどんな街なんだろう、行ってみたいなぁって思った全然京都関係ない人が発注したかもしれないですよね。パリ行ったことないけど憧れてパリの街散歩ガイド持ってるみたいな。
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床がグーグルマップのように位置関係を説明してくれています。

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こんなのなにがなんだかわからないよ!と諦めるなかれ。目立つものを見つけて、東山エリアか北山エリアかが分かれば場所によってはどこだか自分で判定できます。例えば、左真ん中らへんにある寺は、五重塔から東寺だと推測できます。

解説のどこかで「屏風を置けば異空間ができる」と表現されていましたが、まさにこのこと。部屋にいながら、季節を春に、夏に、見渡す限りのススキに囲まれた武蔵野に、京の都に、滝にいるような感覚を味わうことができるのです。蒸し暑い夏の日も、滝を掛けておくことで少し涼むことができたかもしれませんね。

 

第2章 小をめでる

ミニチュア天国の世界にやってきました。

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清少納言が「小さいものは無条件にカワイイ♡」と言っているらしく、それがミニチュアのことを指すのかどうかはさておき、日本人が古くから持ち合わせる感覚のようです(私も昔枕草子読みましたがその記述については忘れました)。

江戸時代後期、上野の不忍池近くにあった「七澤屋(ななさわや)」は雛人形を並べるときに使うミニチュアなんかを販売している人形店でして、すごく流行ったそうですよ。なんでも、小さいミニチュア一つひとつに遊び心があるんだとか。
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皿が意味わかんないくらい可愛いですね。マトリョーシカみたいになっています。
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文房具系ですね?
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美容・化粧品系ですね?
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(「雛道具のうち 牡丹唐草文蒔絵厨子棚」七澤屋/江戸時代 19世紀)

解説によると、厨子棚とは「見せる収納」のインテリアだそうです。上の写真が厨子棚のミニチュア。扉が開く仕様になっていて、大黒天と恵比寿、狛犬が顔をのぞかせます。これが大変に可愛く、会場で私も思わずにっこりしてしまいました。ところで、大黒天や狛犬で江戸時代の子どもは喜んだのでしょうか。神獣や七福神は、ポケモン的な位置づけのものなんでしょうか。
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実際の硯と、ミニチュアの硯が並べて展示されています。

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我が家にも似たようなセットを見つけましたので、一緒に載せておきます。

 

第3章 心でえがく

この章では、面白い絵巻を見ることができます。3つ紹介しますね。

  • ①「かるかや」/室町時代 16世紀

完結に言うなら、父をたずねて三千里です。この絵巻は仏教説話を語り聞かせる絵本だそうですが、最大の見どころは絵の下手さ。解説パネルでも、「絵は正直下手ですが、」と評されています。
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う~ん、狩野派や応挙にはない感じです。
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この傾きはなんなんでしょう。
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僧侶の頭身!
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高野山の奥の院が登場しました。以前旅行で行ってとても印象深い場所です。
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漫画ドラマ映画でよくある展開!!
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撮影した写真がブレすぎてて申し訳ないのですが…僧侶(グレーの服の人)が登場する度に同じポーズなので、何か見本の図像を見ながら描いたのだろうと思いました。

さて、いかがでしょうか。下手でもできなくてもとりあえずやってみることが大事かもしれないと私は考えさせられる機会になりました。

 

  • ②「鼠草子絵巻」/室町~桃山時代 16世紀

「鼠の権頭は、子孫を畜生道から救いたいと人間との結婚を計画、ついに人間の姫君と結ばれます。しかし、夫が鼠であることを知った妻は、鼠捕りを仕掛けて逃亡。破局にショックを受けた権頭は出家してしまいます」というストーリーです。子孫を畜生道から救いたかったという使命を知ってしまうと、権頭にただただ同情してしまいますね。

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鼠サイドの見え方⇔人間サイドの見え方

うん…でも、右側を見るとやはり人間の私にはショックが大きいですね。

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姫君たちもまさ同じ気持ちになったようで、
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夫に罠を仕掛けて、かかってしまうのです。

このあと権頭は妻との楽しかった時間を思い出して泣くのですが、本当に切ない話です。来世は人間に生まれ、普通に幸せな結婚をしてほしい。

 

  • ③「雀の小藤太絵巻下巻」/室町時代 16世紀

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雀が主人公になる作品もありました。
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毒舌コメント(ってことですよね?)。

 

日本の絵を見ていると思うのは、大きい絵でも空間のつながりとかはあまり考えず、描けるかどうかは置いておいて描きたい物体や人を描く!という気持ちが強いのかな、と思います。そして、鑑賞者もまた、この下手な絵を肯定してきたのではないでしょうか。この日本美術の性質が、デフォルメされた可愛いイラスト、漫画に繋がっているのかも。

 

第4章 景色をさがす

いつもの階段を降ります。おや、うつわ系の何かが展示されているようです。

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いかにも六本木らしい展示風景!
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(「黄瀬戸立鼓花入」美濃/桃山時代 16世紀)
飾るときに胴の斑点を見せるのか、見せないのか、という話。この手の展示は二人以上で来たお客さんが意見を言い合うきっかけになるし、すごくいいなぁと思います。

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特徴ある形の器たち

一見不完全・不良品に見えるモノも、大事に使われていたんですね。そう見ると、このいびつな花瓶も愛おしく見えてきました。
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この鶴はとても可愛くて、正面は確かに迷うなぁ~。

昔根津美術館で、欠けてしまった茶碗を「むしろ味わい」と大事に使い続けた、というエピソードを見たことがあります。器は手作業で完全な形を何個も作るのは難しいでしょうから、歪みや欠け、色の濃淡を個性を捉えてそのもの丸ごとに愛情持って使っていたんだと思います。不完全さを含めて、肯定するって見習いたいですね。

また、「どう見るかは自由」と言う考え方が提唱されているように思いますが、美術鑑賞の点では確かに重要です。ただ、いきなり自由に見ろと言っても難しいのが現状。そこに、本展で「花瓶、正面から見るか?後ろから見るか?」と例題を投げかけてくれているのは、親切な設計だなと思いました。

 

第5章 和歌でわかる

「今まで日本美術鑑賞を楽しめなかった?それ、和歌を知らないからじゃない?」の章です。

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崩し字で読めないのが、現代文字に直されています。「今まで見えなかったものを見えるようにしますよ!」という本展からのメッセージでしょうか。
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鳥たちが歌を詠んでいる世界…!
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(「春秋花鳥図屏風」土佐光起/江戸時代 17世紀)

作品が生まれるきっかけになった和歌の紹介例を一つ。屏風をこのまま見ても普通に素敵だな、とは思います。本展では、なんで桜と楓なの?というところに踏み込んでゆきます。さあ、ここで貼ってある文章を読んでみましょう。

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これは「古今和歌集」の仮名序(はじめに、の部分)です。龍田川の紅葉と吉野山の桜ってすごくいいよね、という内容の有名な文章。楓と桜を見ると「あぁ〜古今和歌集の出だしのことね」と連想できる前提で描かれていると思われます。

美術鑑賞したときに、モチーフが持つ意味を知っているとより楽しむことができます。そして、頻出である和歌はたくさん覚えておくといいよ!ということなのでしょうが…和歌って言ってもたくさんありますよね。百人一首+20首くらいしか知らない私にはハードルの高い世界です。

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(「柿本人麻呂像」谷文晁/江戸時代 1806年)

柿本人麻呂の説明で、「かつて和歌が日常のコミュニケーションや恋愛、はてに出世にまで関わる重要なスキルだった時代、古の和歌の名手は伝説のアイドルのような存在でした」という記述がありました。和歌が得意な人→文化人・教養のある人という位置づけだろうとぼんやり思っていましたが、この記述ではっとさせられます。仕事、恋愛、生活すべてで和歌が役に立つ時代だったんですよね。そう思うと、当時の「和歌がめっちゃできる」って今でいうと、コミュ力があるとか機転が利くとか気遣いができるとか雑談力があるとか、そういうたぐいのことなのではないでしょうか。

今「日常のコミュニケーションや恋愛、はてに出世にまで関わる」ことを色々教えてくれるのは誰でしょうか? 現代で言えばメンタリストDaiGoさんとか、中田敦彦さんのように捉えられていたのかもしれませんね。
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(「色絵梅流水文大皿」有田・鍋島藩窯/江戸時代 18世紀)

ここまで美術品を見てしまうと、一枚のお皿にこんなに綺麗にまとまっている絵は、なんだか退屈に感じますね。

 

第6章 風景にはいる

本章のテーマは、「点景人物」です。風景画の中に描かれる人物のことを指します。点景人物の位置に立ったつもりでその景色を見てみようよ、というのが最終章です。

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すごい問いを投げかけてくる…!!新しいですね。一つずつ答えていくことで、どんどん絵の中に引き込まれていきます。

目を凝らすと見つかる掛け軸系から、面白味のある浮世絵まであって、人物を探すだけでも楽しい展示でした。
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(「徒然草絵巻 第五巻」海北友雪/江戸時代 17世紀)

私は「徒然草」が結構好きなのですが、最後の締めが徒然草第52段の話を引用していていいオチだな~!と思いました。私も52段の例えはたまに使っています(笑)

 

番外編

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見終わった方がチラシ不要の場合、回収してくれるカゴが置かれていました。すごくいい取り組みですよね。

 

「【写真撮影OK!訪問レポート】「日本美術の裏の裏」は日本美術の見方を教えてくれた【感想】」のまとめ

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すごく完結にまとめますと、

日本美術はみんなが興味を持ちやすいものもあるよ!楽しみ方は自由だよ!楽しめないんだとしたら、前提となっている和歌を知らないだけかも!

みたいな展覧会でした。学芸員さんの来場者を楽しませようという気持ちが伝わってくる展示でしたので、来てよかったなと思いました。

日本美術初心者の方も、気になったものは写真が撮れるし、解説も非常にわかりやすいし、見終わったら六本木でぶらぶらできるし、おすすめです。

 

 

 

参考サイト

リニューアル・オープン記念展 Ⅱ 日本美術の裏の裏 展示構成 サントリー美術館

 

 

 

 

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